[山形] 記事数:1
日本=カナダ=イタリア合作映画「SILK(シルク)」が、2007年1月19日(土)全国で封切られます。前評判の悪い映画ですが、原作は「海の上のピアニスト」のアレッサンドラ・バリッコ、監督は「レッド・バイオリン」のフランソワジラール、音楽は坂本龍一。映像と音楽はかなり美しいはずです。
この映画の国内ロケは、長野県松本市と山形県酒田市が中心で、東北地方各地で撮影が行われました。今回紹介する酒田市でも、主人公のエルヴェ・ジュンクールを演じるマイケル・ピットが船で出入国するシーンなどを撮影したようです。
物語の時代背景は、フランスで蚕の疫病が発生した1860年代。妻をフランスに残したまま、世界一美しい絹糸を吐く蚕卵を求めて日本へと旅に出るところから始まります。幕末当時の日本は、生麦事件やニール大佐襲撃事件など、外国人が襲撃される事件が頻繁にあり、命がけの旅であったことでしょう。酒田の山居倉庫(さんきょそうこ)が建築される30年程前の話です。
今日紹介するのは映画の話ではなく、この映画のロケ地にも選ばれた酒田市の山居倉庫の話でした。
江戸時代の酒田は、寛文12年(1672)西回り航路が整備されると、「西の堺、東の酒田」といわれるまでに発展しました。戦後の農地改革まで日本一の大地主だった本間家などの豪商が活躍し、奥州屈指の港町として栄えました。
山居倉庫は、米穀取引所の倉庫として明治26年(1893)に建てられたもので、100年以上たった現在も現役の倉庫として使われています。12棟の土蔵造りの建物は、周囲のケヤキの大木とともに情緒ある風情を醸し出しており、心地よい海風とともに、穏やかな気持ちにさせてくれる場所なのです。
近年、倉庫2棟を改築し(2棟だけで良かった)酒田市観光物産館「酒田夢の倶楽(さかたゆめのくら)」として生まれ変わりました。大ケヤキのオープンテラスにショップやレストラン。「華の館」には、酒田の歴史や文化を紹介するミュージアムがあり、江戸や大阪との交易で繁栄したころの風俗「雛あそび」や、人形師で有名な辻村壽三郎(つじむらじゅさぶろう)の創作人形なども展示しています。
なぜ酒田で人形かというと、酒田には鵜渡川原人形(うどがわらにんぎょう)という素朴な土人形のお雛様が庶民の宝として受け継がれていたようです。また、繁栄の時代に残された、贅を尽くした雛人形が数多く現存することで、これらの由緒ある雛人形を一斉に公開展示する「酒田雛街道(さかたひなかいどう)」というイベントが2月下旬から4月上旬の間に行われているからなのでしょう。
参考:「庄内のお雛さま・ひな祭り」
初めて行った時の山居倉庫は小さな売店があるだけでした。静かで直線的な佇まいに、直線的な大ケヤキが良く似合うんだなと思いました。大ケヤキの若葉がサワサワと揺れ、木漏れ日が交差し、倉庫に柔らかな影を落とす。犬と散歩する人、子供と遊ぶお父さん、部活帰りの学生・・・そこには、なんてことのない日常の風景がありました。ここに暮らす人々の日常の風景こそが大切な街の個性であり、たまに来る観光客よりも大切な存在だと思うのです。市民が憩うことのできる場所や市民に愛される場所は、観光施設という作り物からは絶対味わえないその街の素顔であり、最も居心地のよい場所なんだと思うのです。残りの倉庫には手を入れてないことを願っています。実際に倉庫として使われていることが魅力ですし、建て替えず古いまま利用してきたことで、酒田の貴重なシンボルになることができたのですから。旅人がまた余計なことを言ってしまった・・・。(YT)
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