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[わたしの歳時記] 記事数:23

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花は、咲いたか

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 4月・卯月の清明の頃に入りましたが、今年は例年に比べ、気温が低いようです。ここのところ日中はやっとコートも手放せるようになって、気が付けば家々の庭に咲く花や野山にある木々も少しずつ春の色を纏って、華やかな空気を醸し出していますね。

 4月と言えば花見、花見といえばイコール桜なのは言わずもがな。でも四季を通して様々な美しい花が咲くのに花見と言えば桜を指すようになったのはなぜでしょう?
それは、貴族文化からきているようです。奈良時代は、花といえば梅や萩をさしていましたが、平安時代より桜が花の代名詞になっているのです。平安の貴族たちは桜の花に心を躍らせ、桜を愛でては歌を詠み、宴を開いて楽しみました。
 また、農民にとって花見は豊作祈願の行事でした。古来より、田の神様は冬になると山へ行き、春になると里へおりると考えられていました。「桜」の「さ」は早苗、早乙女、皐月などと同じように稲や田の神様をさし、「くら」は神様の座る場所という意味で、春になっておりてきた田の神様が宿る木とされていたため、桜のもとで田の神様を迎えてもてなし、桜の咲き方でその年の収穫を占ったり、桜の開花期に種もみをまく準備をしたりしていましたそうです。
 こうした平安貴族の宴や農民の豊作祈願の行事が、江戸時代には春の行楽として庶民の間で広がり、やがて酒を酌み交わす「花見」となって定着し続いているのです。

 毎年この時季になると、各地のお花見の賑わいがニュースなどで伝えられますが、今年は震災の影響もあり、お花見は自粛ムード。でも自然の美しさを愛でる気持ちには何の罪もありません。桜はただ、自然の流れの通り咲く時を待ち、春の暖かさとともに花開いていくだけです。
 こんなときだからこそ、ひとりでも、パートナーと二人だけでも、のんびり穏やかに花を愛でる時間を取って、気持ちは晴れやかにしたいものです。そして単に飲んで騒いでというマナーを逸脱した花見の形も増えていた昨今、本来の花見のこころを見直す機会にもなるのではないかと思います。
 なんていいながらも、自分も「花より団子」なところも。花見もいいけど、見るだけでなくやっぱり味わわなくては、と頭に浮かぶのは「桜餅」。この桜の葉に包まれた桜餅、実は知らない人も多いようですが、2種類あるのです。小麦粉や米粉などの生地を焼いた皮で餡を巻いた、クレープ状のお餅の関東風。道明寺粉(もち米を蒸して乾燥させ粗挽きしたもので大阪の道明寺で作られたため道明寺粉という)で皮を作り餡を包んだ、まんじゅう状のお餅の関西風。東京では両方が置かれている場合も多いのですが、やはりこの北関東では関東風の桜餅が主流なようです。そこで時折、どちらがお好みかということでちょっとした議論になったりもしますが、「どっちも美味しいから」とまた和菓子屋に買い求めに行ってしまう私なのです。

(震災の被害を受けた多くの方々にお見舞い申し上げます。被災地の復興、そして一日も早く被災された方々に穏やかな生活が戻りますよう、願ってやみません)



<コラム>どちらがお好みですか?桜餅の違い

本文でも書きましたように、時折ちょっとした議論になる「関東風か関西風かどちらの桜餅がいい?」ということ。もうすっかり流通が盛んなのでスーパーなどでどちらも見かけるものかと思っていましたが、やはり関東のひとだと「クレープで巻いたようなのが桜餅だと思ってた」との声も。どちらもそれぞれ美味しいと思いますし、地方の違いがあるものほど面白いもの、そういったものがいつまでもあるほうが風情があるなと思うのは私だけでしょうか?


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