明治時代から三代続く、盛岡の伝統工芸「南部鉄器」の老舗「釜定」の鉄器に出会ったのは友人から貸りた一冊の本でした。本に掲載されていたのは、おいしそうなパンケーキとシンプルなオイルパン。まさに一目惚れでした。こんな美味しそうなパンケーキが焼けるオイルパン…。一体どんな方が作っているんだろう、どんな工房なんだろう…。そんな思いを胸に、盛岡まで旅をしました。
昔の風情が残る盛岡市紺屋町。その一角にある「釜定」。工房を備えた店内には、黒く重厚感のある美しい鉄器が並んでいます。3代目のご主人・宮伸穂さんは、鋳物の職人でありながら、フィンランドで暮らした経験もあるのだそうです。
奥の棚に等間隔にずらりと並べられた「鉄器」。一つひとつが違うデザインでありながら統一感があり、鉄なのになぜか軽やかさを感じます。お堅い伝統工芸品のイメージはなく、和風でも洋風でもなく、シンプルで洗練された雰囲気を持っています。
数ある鉄器のなかで、私が惹かれたのは「洋鍋」でした。シンプルな中にダイナミックな曲線を描く鍋に、引き抜くだけで取り外せる木製の取っ手を組み合わせたデザイン。木と鉄が融合された美しい鍋です。
デザイン性だけでなく、熱効率に優れ素材の味を逃がしにくい特長があります。保温性の高い鍋類は、1つの鍋で、煮る、焼く、揚げる、オーブンにかけるなど、様々な料理が楽しめます。
実際に料理をしてみると、1度温まると弱火でもしっかりと火が通ります。肉じゃがなどはじっくり火を通すので、野菜が崩れずホクホクです。また、鍋料理や、オーブン料理など、取っ手を取り、食卓に並べても食器として使うことができ、料理を熱々のまま食べることができる優れものです。
釜定工房 [岩手県盛岡市]
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