浅草には老舗と呼ばれるお店が沢山あります。江戸の昔から、浅草界隈には沢山の店が立ち並びにぎわっていたそうです。時代が移ろい、芝居小屋などが減少し、衰退してしまった時期もあるそうですが、今ではレトロな雰囲気を懐かしむ観光客も多く、とてもにぎやかな街です。
大きな商店街から少し離れたところにあるのが、並木藪そばです。言わずと知れた名店で、中に入ってみると紳士、淑女のように気品のある方々が訪れるような、上品で落ち着いた雰囲気の店内です。
お酒を飲みながら、蕎麦をつまみにしてゆっくり食べる紳士の姿は絵になり、大人のお店と言えるような、落ち着いた場所でもあります。
私をここに連れてきてくれた方も、ざるそばに、さっと日本酒を少量だけかけてほぐし、酒の風味を聞かせてから食べる粋な食べ方をしていた人でした。
「やぶそば」という名前は色々な場所で見かけたことがあるのではないでしょうか?
この藪蕎麦はその昔「やぶの中にあった蕎麦屋」が「藪蕎麦」と呼ばれていたと言うのが有力な説です。歴史は古く、1750年周辺にはすでにこの薮蕎麦が存在しており、この説が大きく広まっていったといわれています。
「並木藪そば」は、そんな薮蕎麦の中でも御三家と云われています。
東京神田にある神田薮蕎麦、上野にある池之端藪蕎麦。そして「神田薮蕎麦」の三男が浅草に1913年にオープンした「並木藪蕎麦」の三家です。時代、歴史小説家で食通でも有名な池波正太郎さんが愛した店でも有名です。
「ざる蕎麦」の盛られているざるが、通常のざるの逆さになっており、こんもりと盛られた感じがなんとも品がいいのです。
カツオの出汁が効いた濃い目の汁に、蕎麦を全部入れてしまうのではなく、ちょっとだけつけてさっと食べるのが、江戸の作法であり、この薮蕎麦が発祥だそうです。確かにこの食べ方をすると、汁の塩辛さの中に蕎麦の香り、甘みが引き立ちます。
細めの麺はあっさりと頂くことができ、食べ終わると蕎麦湯でお腹が温められほっと一息。最後まで美味しさをかみ締めることができます。
近年、建物は改装されましたが、雰囲気は昔のままで、ほんのりとした明かりと、歴史を重ねて来た建物の中で、長い時の重みや、粋な方達、この街の歴史に想いを馳せながら過ごすひと時はとても贅沢な時間でした。
並木藪蕎麦を訪れる人にとって、お店の持つ独特な雰囲気、歴史的背景が「大人」という雰囲気を感じさせてくれるに違いありません。
藪そばの美味しさを堪能してみませんか?
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