ゆたり倶楽部

[フラワー・ガーデン] 記事数：8

◎フラワー・ガーデン

野の花　にこぐさ
[栃木県宇都宮市]

目が合ったその人だけに、微笑んでくれるような花を。
街中に佇む古民家のお花屋さん

宇都宮駅前大通り－。近年、都会的な街並みへと変化し続けているこの通り沿いに、ひっそりと佇む一軒の古民家。戦前に建てられたというこの趣ある建物こそ、海老原さんご夫妻が営むお花屋さん「にこぐさ」です。

　店先には、道ゆく人に束の間の安らぎを与えてくれる可憐な小花や鉢物。蓮の暖簾をくぐって店内に一歩足を踏み入れば、季節感溢れる花や木々たちがノスタルジックな空間に調和し、美しさをより一層際立たせています。｢飾られている｣というより、草花のありのままの姿をいかしたこのお店独特のディスプレイは、訪れた人を野山で散策している気分にさせてしまいそうです。

　｢色合いが地味ですよね(笑)。ついつい自分達の好みがでちゃうんですよ｣と、笑いながら話す海老原さん。淡く優しく、どこか儚げで健気。｢にこぐさ｣の草花たちは、その一花一枝にやわらかな表情をみせながらも、凛とした生命力をあわせ持っているように思います。｢置いてある草花は、目が合ったその人だけにこっそり笑いかけてくれるような、そんな雰囲気のある花を扱いたいのです｣。

　別室の作業台で、花の仕分けやアレンジメントを行うご夫婦。ときおり土間に向かい、アレンジに使う花を探しにいく奥様の姿は、まるで野原に花を摘みにきている少女のよう。そうして出来上がった花束は、それぞれの花のもつ魅力が十分に感じられる自然な仕上がりです。贈る人と受け取る人の心の架け橋になる海老原さんの花束は、きっと全ての人を笑顔にしてくれることでしょう。
　道端にさりげなく、そして一生懸命に咲く小さな花のような｢にこぐさ｣。あなただけにそっと笑いかけてくれる、愛しい存在のお花屋さんです（m.m.）。