シニア劇団のジョイント公演を観に、山形県川西町の劇場へ向かった。
地元のシニア劇団と、もうひとつは、宮城県仙台市のシニア劇団だ。
仙台市のシニア劇団まんざらは、中国残留孤児問題を扱った女性のモノローグ芝居
「花いちもんめ」を上演した。
厚労省のイベントとして上演された初演(今年2月)と違い、
再演だった今回は行政による規制もなく、一切カットなしの舞台となった。
初演で違和感を感じていた劇団員の皆さんは、こうしてカットなしで
再演の機会を得たことに、喜んでいらっしゃった。
私は、1か月前のリハーサルを拝見していたが、
その前からこの戯曲の存在は知っていた。
何かと笑いを取り入れるシニア劇団が多い中、
こうして堂々と反戦ものを上演するその勇気をまずは讃えたいのだが、
それ以上に、本番を観て意外な感覚に包まれたことに、とても驚いた。
公演は7月20日。
リハーサルを見たのは6月19日。
この1か月の間に、日本では集団的自衛権が閣議決定されるという
歴史的な大事件があった(7月1日)。
行政による、この無謀で傲慢な決定によって、
いままで遠い国の出来事だと思っていた「戦争」の2文字が、
いまの生活を脅かす存在として迫ってきた。
これまで、戦争関連の演劇や映画、テレビドラマを観ても、
どこか現実としては捕えがたい、過去の出来事としてしか感じなかったのに
「花いちもんめ」を観劇しながら
私は「また、この悲しみが繰り返すのかもしれない」という恐怖を感じていた。
悪夢の7月1日、閣議決定と同時に、
日本の中高生にむけて、自衛隊募集の手紙が送られたという。
シニア劇団員の孫世代に、第1回目の召集令状が来たようなものだと私は感じている。
このように着々と戦争準備をする安倍政権に対し
私たちはどう抵抗し、戦後を継続し続けられるのだろうか。
演劇も映画も、社会情勢によって感じ方は大きく変わる。
そのうち、この「花いちもんめ」が上演不可能になる日が来るのかもしれない。
高齢者から戦前戦中の話を聞いていたことが、また繰り返されるのだろうか。
演劇人が、演劇を通して何ができるのか・・・・・
東日本大震災以降、そのことを考え続けている。
そしていま、戦争関連の作品が、
今までとは違う意味を持って日本人の胸に迫ってくるようになって
なお、それを考えなければならない時がきていると感じている。
だまって、政治情勢を眺めているだけではだめだ。
(残念ながら無関心な人が多いが、
関心を持ちながら話題にすることさえ憚られるという淀んだ雰囲気は、
まさに戦前そのものだ。)
カーテンコールで、2劇団が並んだ。
アマチュアだって、表現者としてしっかりと声をあげ、
演劇を続けられる社会を守るために、
平和を守るために、
自分にできることを探さなければならない。
そういえば、ここ川西町は、井上ひさしさんのお膝元。
井上さんといえば、平和主義の劇作家代表者と言っても過言ではない方。
彼の書いた「子供のための日本国憲法」は、
戦争を体験した彼の思いが、いっぱい詰まっているのを感じる。
ここで、「花いちもんめ」が上演されたことは
ものすごく意味のあることだったと思う。
ちなみに・・・・
子どもの遊びの「花いちもんめ」は、人身売買の怖い歌詞だ。
Trackback(0) Comments(0) by 鯨エマ|2014-07-22 01:01
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