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[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

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演劇のバリアフリー

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劇場のバリアフリーサービスを始めてから早10年、
いまは、自身の公演で点字のチラシを作ったり、
劇団銅鑼さんで、音声ガイドをつけたりしています。

日頃、障害者と接点のない生活を送っている方にとっては
劇場でであったときに、どんなサポートをしたらいいのか、
また、公演があることを、どのように知らせたらいいのか
迷うものです。

障害者、と一口にいっても、
障害の種類、度合、その方の性格などによって、
対応の仕方は変わってくるものです。
それは、健常者のお客さまを相手にするときと、
基本的に変わらない態度なのです。
相手が、何に困っているか、まずは聞く姿勢を持つこと、
それが劇場のバリアフリーサービスに一番必要な部分、
つまり、「心のバリアフリー」なのだと思います。
そして、そのうえで作品の世界観を壊さないように、
観やすい環境を提供することができればと思っています。

さて・・・・
先日、聴覚障害者の方と一緒に、手話付きの公演を鑑賞しました。

かんじゅく座が出張公演をする時にも、
手話通訳の方がついてくださったことがあるので、
初めての体験ではなかったのですが、
登場人物6人の、膨大なセリフを一人で手話で表現するというのは
ため息が出るほど大変そうでした。

芝居は「トライブス」といって、聴覚障害者が登場する作品でした。
健常者と障害者の、心の溝のような難しい問題を
きめ細やかに描いた作品でした。
共感する部分もありましたが、全体的に重苦しい空気が立ち込めておりました・・・
鷲尾真知子さん演じる母親役は、エキセントリックでありながら、
どこかリアリティがあって面白かったです。

観劇後、この作品、そして、手話通訳について
聴覚障害者の方と通訳者、追わせて15人くらいのかたたちと
座談会をしました。
(この場で手話ができないのは私だけでした。)

手話通訳者が立つ位置について、
通訳のタイミングについて
複数名が立て続けにしゃべった時の対応について
暗転時の話声の通訳について、
作品の内容について・・・・

みなさんから、本当に素直で率直な感想が飛び交い
非常に面白い座談会でした。

わたし自身も、視覚障碍者用の音声ガイドを作っていますが、
はたして、音声ガイドや手話通訳をつけることが、
作品にとって、本当に素晴らしいことなのかというと
そうは言い切れない気がします。
作品によっては、訳しきれないこと、伝えきれないこと、
また視覚や聴覚に訴えようという演出のところは、効果が発揮しきれないこと、
など、網羅しきれないことがたくさんあります。

私は10年前に、音声ガイドを作るにあたって、
視覚障碍者から受けたアドバイスを思い出しました。
その方は「バリアフリーサービス」などは、
半ば有難迷惑だと思っていらっしゃったのか、
または私のやり方を手ぬるいと思ったのか、
厳しい意見をおっしゃいました。

「音声ガイドをつけるくらいなら、最初からユニバーサルデザインの芝居を作ればいいんだ」

これは、至極もっともな、ご意見でした。
いまでこそ、公共施設などは、障害者が来ることを踏まえて
バリアフリー化が義務付けられていますが
それでも、世の中のほとんどの物事が、
健常者を中心につくられ、設定されています。
多くの人がそれを当たり前だと思っていますが、
これは、想像力の欠如の何物でもありません。
今回の芝居も、聴覚障害者が鑑賞することを前提に作られたわけではなく、
あとから、「聴覚障害者用サービス」を付け加えた形です。
「最初から一緒に楽しめるものをなぜ、つくらないんだ」という意見は
私は、忘れてはいけない重要なメッセージだと思いました。

とはいったって、見えるものにとっては視覚に訴える効果的な表現を
聞こえるものは聴覚に訴える表現をしたい・・・
創り手なら五感をフル稼働させたいのが心情です。
歩みよりができるかどうか・・・・
その微妙なところに
「劇場のバリアフリーサービス」は、入りこんでゆきたいのです。

2月20日と3月20日に、演劇制作者にむけて
劇場のバリアフリー講座を開きます。(全2回)
制作の方だけでなく、興味のある方ならご参加いただけます。
実際に視覚、聴覚障害者の方にきていただき、
お話を伺える、貴重な機会です。
詳細は、おって発表いたしますが、
ご興味のある方は、ぜひ、18時半以降のお時間をキープしておいていただければと思います。

今日はポカポカ陽気・・・ほっとしますね。

Trackback(0) Comments(0) by 鯨エマ|2014-01-29 14:02


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