田んぼの間のあぜ道に、赤い彼岸花が咲くころ。2012年9月のお彼岸の中日、筑波山のふもと茨城県石岡市の八郷地区の端っこで、あるおまつりが始まりました。『八豊祭』と書いて、『やっほうまつり』と言うおまつりです。
八豊祭の「八」は、かつて八つの村が合併して出来た八郷地区の「八」。八郷地区は東京から70キロほどの距離。東京から1時間と少し、車でひとっ走りすれば、大きな空の下、田園風景が広がり、それを取り囲むように筑波山をはじめとした山々が連なる風景に出会えます。そこは、いちごやぶどう、梨に、柿、みかんからりんごまで1年を通して様々な果物が育つ、実り豊かな場所です。
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今年で2回目の八豊祭のテーマは『自立』
八豊祭は、廃校になった木造校舎(※)を借りて行われます。おいしいカフェや有機農家から直接野菜を買える特産市、アコースティックライブや、八郷に自力で家を建てた人たち、都会から移住してきた女子によるトークコーナー、おじいさん、おばあさんから教わる藁ない体験、八郷に残る茅葺き民家を訪ねるツアー、自然にあるものを使って遊べる子供向けワークショップ、自分の体に向き合えるセルフヨガなど、魅力的なコンテンツがたくさん詰まっています。
※廃校後は、朝日里山学校という体験型観光施設として、農業体験やそば打ち体験、ピザ焼き体験などができる場所として活用中
まつりのはじまり
「自分たちの暮らす地域に積極的に関わって、そこで生まれたつながりに手間をかけながら、ここで暮らしていきたいね、という話しから八豊祭は始まったんです。」そう話すのは実行委員長の茨木泰貴(いばらきやすたか)さん。大学時代、環境になるべく負荷をかけない暮らし方を模索する中で有機農業を知り、卒業してすぐ有機農業が盛んな八郷に移住。もう10年になります。
「八豊祭を始めるきっかけは、『やさとカフェ』という活動でした。移り住んできていた仲間同士で、地元の人も外から来た人も気兼ねなく集まれる、コミュニティカフェがあったらいいのにねと話していたんです。例えば、八郷でとれた食材で料理をつくったり、八郷の山の間伐材を薪に使ったり、映画の上映会や講演会、バザーとかいろんなアイデアが出てきて。民家から頂くゆずでデザートを作って、提供してもらったゆずの変わりに、量に応じてデザート無料券を配るとかいう具体的なものまで(笑)でも、実際に建物を建てるだけのお金もないし(笑)、建物だけあっても、そこに集う人がいなかったらコミュニティカフェじゃない。そもそも、こうやって、コミュニティカフェをやりたいねといって集まってお茶を飲んでいる、自分たちのこの感じが、ちょっとコミュニティカフェっぽいよねと(笑)」
「建物はなくても参加者を募って、考えたアイデアを元にいろんな企画をやって、その後にみんなでランチやお茶したりする時間を作ってみようと始まったのが、『やさとカフェ』です。『幸せの経済学』という映画の上映会をしたり、八郷の間伐材が利用する手作りのストーブを作る会を開いたり、八郷にいるお年寄りにわらじ編みを教わったり。そういう企画を重ねていくうちに、この地域をもっともっとたくさんの人に知ってもらいたいと、みんなが思うようになっていって。だったら、八郷の魅力を伝えるおまつりをやろう!とぼくが勢いで言ってしまったんです(笑)。そしたら、意外にも(笑)みんなの食いつきがよくて、やってみよう!と」
まつりをつくることで生まれていく、人と人のつながり
「もともと『やさとカフェ』のメンバーは、8人。有機農業をやりたくてとか、この場所に惹かれてとか、パートナーの都合でとか、ここに移り住んで来た理由はそれぞれ。だから、おまつりをやるにあたって、『やさとカフェ』でやっていること以外にもたくさんのアイデアが出ました」
「八郷の山を背景に音楽を聴きたい、八郷で陶芸や木工をやっている作家さんにものづくりを教わりたい、果物狩りをしてちょっと関心をもってもらえないかな、茅葺き民家で昔ながらの暮らしを見せてもらえないかな。その一つひとつが、それいいね!と思えるものでした」
「でも、自分たちだけじゃできないから、ものづくりの作家さんに先生をお願いしたり、暮らしの知恵を教えてくれる地元のおじいちゃんやおばあちゃんにアドバイスをもらいに行ったり、市役所や農協などまちづくりに関わるところへ話しをしにいったり。僕は、それまで8年間八郷にいて、その間にできたつながりもあったのですが、八豊祭をやることになって、新しくまたいろんな人に出会って、改めてこの場所には面白い人がたくさんいたんだなと嬉しくなりました。そうやって、いろいろと動いているうちに、八豊祭に興味をもってくれる地元の人も出てきて、いろんな形で手を貸してくれ、八郷という地域のなかでのつながりが広がっています」
茨木さんの働く農場には、田舎での暮らしに興味のある人や自分で暮らしにかかわるものを作り出したいと思っている人が、週末を利用して、東京近郊から農体験をしに通って来ています。茨木さんは、そんな東京の人もまつりづくりに巻き込んでいきました。
まつりづくりを通して、八郷という地域内のつながりだけでなく、八郷と東京という2つの地域のつながりも生まれています。
この場所で、ずっと暮らしていきたいから
そこにずっと住んでいる人にしてみたら、自分のまちなんて、きっとおもしろみも何もないところだと思うかもしれません。よそから来たから、この場所の魅力に気づくのかもしれません。
「もともと、ぼくのいる農場は、都会の人たちが建てた農場だったんです。だから八郷にあるけど、つながりがあるのは、都会の人たち。そして、ぼく自身も、環境になるべく負荷をかけない有機農業や農場でお米と大豆を育てて味噌を作る企画、ツリーハウス作りなど、いろいろな実践・企画を通して、都会から人を呼ぶことで都会の人のライフスタイルを変えたいというところに関心が強かった。『どこで』『だれと』『何をして』という3つ選択肢があるとすれば優先順位は、何をしていくのかということが一番。『どこで』というのに正直あまりこだわりはなかった気がします」
「でも、震災があり、結果的には、それが理由でこの場所で暮らしていこうと決めました。原発の事故が起こった後、何をどうしたらいいのか分からず、とにかく一度実家に帰ったんです。だけど、1週間ほどして、早く八郷に戻りたくなりました。自分の大切なものが、全部そこにあったから。ですが、不安や心配はありました。実際、ここで有機農業を続けていけるか分からない。中には農業をやめた人もいました」
「けど、それが逆にがんばらないと、という気持ちになり、八豊祭の原動力になっていきました。自分で育てた野菜を食べられるうちは、八郷で生きていけるという確信はあったし、こんなに豊かな土地が、放射能なんかで住めなくなってしまうのは、もったいないという反骨精神みたいな(笑)」
「震災の後、ここにずっと暮らすと決めたなら、きっともっととがった方向に進むこともできたんだと思う。たとえば、東電から電気を買わないとかね。でもそうはならなかった。そうはならなかったけど、なにか働きかけたかった。昔の暮らし方を聞いて、自分たちの暮らしを振り返る時間だったり、バイオガス発電で、家庭用のエネルギーを自給して暮らしている人の話を聞いて、これからの自分たちのより良い暮らしのためのヒントを得たり。そんなことを地元の人とも東京の人とも共有できる時間と場所を作りたくなったんです。より身近なところの自分の手に負える範囲で、できるだけ良いことをやっていったら、それは後から振り返ったときに、大きくはずれてはいないんじゃないかなと。この場所で、ずっと暮らしていきたいから、みんながワクワクすることや、おもしろいと思うことしていきたいんですよね。そうすることが、より良い暮らしにつながっていくんじゃないかなと思うんです」
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八豊祭をやる意味~自立とは~
今年の八豊祭のブログの実行委員長の茨木さんのあいさつには、こんな文章が書かれていました。
「やさとって自然豊かで良いよね」と言ったとき、その自然がどのように支えられているのか。その根本を見つめて、それが10年20年と続いていくものなのかどうか。そういう視点で関わっていかないと、単なるレクリエーションで終わってしまいます。そうならないためにも、八豊祭は、みんなでアイデアを出し合って暮らしていく方法を提案していきたいと思っています。自分でできる事は自分でやる。できない事は人に助けてもらう、協力してもらう。目に見えない巨大なシステムに依存するのではなく、目に見える人の関係の中で、自分たちの暮らしを自立したものにしよう」と提案します。
そのプロセスはとってもワクワクするものであるはずだと思います。
八郷には、さまざまな人が訪れ、新しい暮らしを始めています。野菜作りを志す人、林業に携わる人、陶芸や木工などのクラフト作品をつくる人、田舎と都会の関係を考える人。一方、家族代々で、この場所に暮らしてきた人もいます。地に足のついた暮らしをしながら、すごい知恵や技をもつお年寄り。この地域の10年後、20年後の未来を考え、この場所のいまを動かしている人たち。バックボーンは人それぞれ違うけれど、「未来へつなぐ生き方を感じるローカルフェス」と銘打たれた八豊祭が、その違いを超えて、この地で暮らす人同志、あるいは新しくこの地を訪れる人たちとの出会いの場になっていったら素敵だなと、心から思います。(Maki takahashi)
【八豊祭日程】2013年10月20日(日)
【場所】朝日里山学校(茨城県石岡市柴内630)
【ブログ】http://8houmatsuri.jugem.jp/
【八豊祭申し込み方法】
前売りチケット購入 http://8houmatsuri2013.peatix.com/
上記チケット購入URLからお申込みください。
・参加費用は、クレジットカード、コンビニ払い、銀行振込などの前払いとなっています。
・参加申込は、10月18日(金)15:00に締め切ります、以降は当日扱いとなります。
・コンビニ払い、ATM払いの場合は、10月17日(木)13:00までに申込み手続きが必要となります、
※上記方法でのお申込みが難しい方は、下記問い合わせメールアドレスよりご連絡ください。
【問い合わせ】
八豊祭実行委員会 [email protected]
「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)